明朝体の太さ

明朝体の太さ

書体には時代性・流行があるのは自明のことで、

欧文書体―その背景と使い方 (新デザインガイド)

欧文書体―その背景と使い方 (新デザインガイド)

には、「ある時代を表現するのに最適の書体」という観点で、欧文書体がセレクトされています。

ですが流行するのは書風・書体だけでなく、同じ「明朝体」という枠内でも、その太さにおいても時代の「流行」というものがありました。それは技術的な条件と無関係ではなく、絶えずその時代の印刷・製紙技術や、社会全体の経済状況と密接に関係しているようです。

『基本・本づくり』鈴木敏夫 昭和42年4月(現在ISBNつけて流通していない模様)によると

 戦争直後から急激に変わりだし、おそろしく細めの明朝体が流行しだしました。(中略)

 しかし細め明朝の流行は、実はこれは流行というよりも、必要やむを得ざるためのものでした。というのは、終戦直後にはいい紙がきわめて少なく、ほとんどの印刷物が、仙花紙(泉貨紙とも書く)と称する、表面のザラザラした粗悪な紙でつくられたからです。

 デコボコだらけの質の悪い紙に肉太の活字で印刷したのでは、文字がつぶれてしまって、読めたものではありません。いきおい活字は細め細めにやせ細っていき、極細などという、タテ・ヨコの線の太さの、あまり違わないものが要求された、というのが真相なのです。

(初版は昭和23年)

(4)印刷される用紙

印刷する用紙についても書体を選定しなければならない。戦前明朝の細型が流行した時、アート紙に毛のように細い明朝体で印刷された印刷物の可読性の悪さを記憶する人もあることと思う。細線体はコットンかラフ、木炭紙のような粗面紙に印刷してこそ始めてその効果を発揮する。細い文字線がやわらかい紙にくいこんでちょうど良い太さと黒味になる。これに反してボールド体を粗面紙に印刷すると太線はますます太くなり、真黒になって読みにくくなる。ボールド体はアート紙のような平滑な紙に印刷してこそ、黒味と美しさを十分に表現でき得る。こんなわかりきつたことに案外気がつかず、無関心でいる人が多い。とくに現在あらゆる点で悪条件のもとにあるとき、この方面にも十分注意を配つて、よりよい印刷効果をあげるよう心がけるべきである。

(↑本来は旧字)

DTPスーパーしくみ大事典2005(←雑誌扱い)

には、「縦線が太く、横線が細い築地体」・「築地体に比べて縦線が細く、全体に少し小さい秀英舎体」の二大潮流、

という記載があります。

現在でも縦線の細い明朝体秀英舎型、太いものを築地型と大まかに分類することがある。

とも。

活字に憑かれた男たち

活字に憑かれた男たち

 この本にも関連記述あり。(ページ数etcは後日記載)